ITベンダーの「嘘の進捗報告」を見抜こう
2008/3/15
■はじめに
ITコーディネータの役割として、経営戦略の策定、IT戦略の策定、IT資源の調達、ITの導入、ITのサービス活用がある。その中にある、「ITの導入」フェーズでは、ITベンダーを利用して、システム開発・導入を委託するケースがある。そこで、システム開発を委託した後のITベンダーの進捗状況や品質のモニタリングを実施しなければならない。
本論では、私のITベンダー側からの視点、過去のプロジェクト経験から、ITベンダーの進捗状況や品質状況のモニタリング時の注意点を提示する。
■進捗報告の嘘を見抜け
進捗報告は、良く報告しようという人が多いものです。今、多少の進捗の遅れがあった場合でも、後でリカバリができると思って、今日の進捗報告会では、事なかれで済ませたいと思い、「問題ありません。スケジュールどおりに進んでおります。」と言ってしまう。特に、自分を良く見せたい人や、気の弱い人などは、課題を表面に出すのが、「かっこ悪い」、「恥ずかしい」といった感情から、隠す傾向にあるので要注意だ。これらの予防策として、進捗をチェックするこちら側も事前に準備をする必要がある。ここで、嘘を見抜く3つの注意点を紹介しよう。
まずは、現地で現物を見て現実を知ることを心がけることが重要である。よくある光景で、会議室でスケジュール表と課題シートを出されて、担当者が報告する手法では、本当のプロジェクト状況が見えないと思った方がよい。特に最初の段階で、完了したタスクにおいて作成した成果物の現物を見て確認しないと大変なことになる。よくある話だが、システム導入直前になって、こちらが思っていたのとは、まったく違ったものができていたとか、順調と聞いていた進捗が、実は大幅に遅れが出ていてリカバリ不可能な状態だったとか、報告だけを鵜呑みにして安心するのは非常にリスクが高い。「百聞は一見にしかず」とのことわざがあるが、まさにこれである。担当者の都合の良い報告ばかりを聞くのではなく、現物を見て判断すべきだ。担当者とできれば第三者の有識者にも参加してもらい、現地で現物を前にしてレビューを実施するのが、一番効果的である。
次に、忙しいITコーディネータがすべてのタスクに関して、レビューを実施するのは時間的に不可能である。その場合は、進捗の達成基準を明確にすることが重要である。例えば、作業担当者に、あるタスクに関するステータスを確認した時に、「完了しました。」と報告があった場合、作業担当者が思う完了と、報告を受ける側で思う完了の基準が違う場合が多い。こうならないように、事前に各タスクに対する完了基準を明確にする必要がある。それをメンバーに対して、周知させ、その基準で報告させる必要がある。そうすれば、報告する側も報告される側も同じ基準で進捗状況を把握することできる。
三つ目に、成果物の品質を客観的に本質的に理解することが重要である。少し抽象的になってしまったが、その例を後述に記す。
ケース1.主観的な報告のみで済まそうとしている。
品質の確認をしても、「完璧です。」とか、「問題ありません。」などの、主観的な報告だけで済まそうとしているITベンダーは、もっとも要注意のベンダーである。中小のITベンダーに多い。
ケース2.見た目は客観的だが、その内容が疑わしい。
進捗報告会での品質の確認で、アウトプットの品質を客観的に判断するには、数値による把握が代表的である。テストケース数やバグ修正数、バグ検出率、レビュー実施回数など指標はいろいろあるが、数字での報告があるからといって品質が高いと騙されてはいけない。ITベンダーは都合の良い数字をならべて、いかにも品質が良いように報告する傾向があるので要注意だ。どこかの雛形プロジェクトから指標をそのままコピーして、担当者がその指標を理解していないで利用しているケースがある。数値の報告を受けたときは、その根拠となるデータやレポートをチェックして、本当にその数値がその成果物の物であるか、改竄や隠蔽がないかを確認する必要がある。さらには、その品質指標がその成果物の品質を示すのに適当かどうかを判断する必要がある。
■まとめ
本論で述べた通り、相手の言っていることをすべて信用して進捗状況を鵜呑みにしてはならない。もう一度、3つの注意点を明示する。
1.「百聞は一見にしかず」・・・現地現物主義でレビューを実施すること。
2.「進捗の達成基準を明確に」・・・報告される側と報告する側で基準を合わすこと。
3.「数字に騙されるな」・・・提示された数字の裏まで、読み取ること。
性善説で相手の事を見たいと思う気持ちもわかるが、ビジネスの世界においては、時には性悪説で相手の事を見ていかなければならない。世の中の大きな流れとして、ビジネスの世界は、性悪説で見ていく動きになりつつある。アメリカからはじまったSOX法が日本にも上陸して、日本の各企業がその準備に追われている。現在のシステム開発の現場も同じで、プロジェクト品質、ソフトウエア品質も客観的な視点での品質提示が求められている。特に成果物を大量に作成するプロジェクトの場合は、その品質基準をクリアする為に多大なコストが必要になる。それを価格に反映できれば良いのだが、市場がそれを許さないのが現状である。しかし、それを克服したITベンダーこそが、今後、生き残っていく会社になるのであろうと考えている。
ITコーディネータ 森木 康太

