「ITソリューションをバランス・スコアカード(BSC)の活用で設定するには」
2008/3/15
■はじめに
戦略的IT導入にあたり経営戦略策定から入ることがプロセスガイドラインでは記載されているが、経営戦略から情報化企画フェーズにいたるところで、より簡便にできる方法はないか、より具体的で理解しやすい方法がないか検討してきた。
そこで戦略の展開とマネジメント手法としてのBSCを活用できないかと考え、ITソリューションを探索する方法を検討した。活用の可能性と方法について、また、活用上の問題点と課題について本論で考察していきたい。
(以下、バランス・スコアカードは「BSC」と表記する)
(以下、「戦略目標」とはBSCの4つの各視点で取り組むべき課題、達成すべき目標のことをいう)
■序論
バランス・スコアカードとは、ビジョンと戦略を明確にすることで、財務数値に表される業績だけではなく、財務以外の経営状況や経営品質から経営を評価し、バランスのとれた業績の評価を行うための手法として、1992年に提唱された。
以来、導入している企業も多く見られ、中小企業でも導入活用を推進している例も多い。BSCの有効性の評価は有識者により分かれるにしても、戦略の因果と可視化ができる点と、戦略目標の指標化をすることで、ともすればお題目になり勝ちな戦略がモニタリングできる点は導入活用の意味は十分あると考えられる。
ITCは企業へのIT導入の支援をするにあたって、経営戦略から具体的なITソリューションを検討する手順がより可視化されていれば、経営者の了解も取り付けやすい。また、先立って策定した経営戦略の実行状況の評価も同じ視点でみることができることで、経営のアドバイスと支援が可能になるといえる。
■本論 1 BSCの導入
ITCはまず経営者と幹部向けにBSCの導入と展開の学習を進める必要がある。学習は事前に解説書などを提供しておくなどして準備をすすめる。
私のBSC導入支援経験から言うと、用語の意味と定義は理解されるためには時間がかかる。企業規模にかかわらず「経営戦略」という用語すらビジネス日常用語として頻繁に使用している業種、業界は少ない。ましてBSC特有の用語について、一度に理解できるとはいいがたい。ITCなりに砕いた表現や言いかえが必要である。また、BSCに関する学者やコンサルタントは、自分なりの解釈や自論を書籍等で出しているので、ITCも十分習得して自分なりの意見を持っておくほうがよい。経営幹部の中には個人的に興味を持ち、研修にも参加した人もいる。BSCの解釈で論争になったこともあるので、無意味な論争にならないためにも留意する必要がある。意見は意見として受け取り、いかに実務的に有効に使うかという点で討議し、合意することを進めたい。この点では学問的に追求する必要はない。
中期経営戦略の策定に当たっては、従来どおりの現状分析といくつかのツール(SWOT分析など)で戦略の柱となるものを策定しておく。ここではBSCを戦略の展開手法として位置づけているので、戦略策定はプロセスガイドラインに沿って策定する。
さて、事前準備ができたところで、BSC展開をはかるが、ITソリューションの眼を見つけることに着目したいので、戦略MAPが完成させることにより神経を注力する。もちろん後の手順-KPI設定、実行計画、アクションプランへの落とし込み-は必須である。
戦略MAP上の戦略目標は十分に討議を重ね、全員の納得をとる必要がある。ともすれば戦略目標の表現が抽象的になり、それぞれのイメージがずれていくことがある。たとえば、「顧客ニーズの把握」という戦略目標をあげたところ、いきなりアンケートやヒアリングを想定した人もいれば、顧客情報DBの構築を検討すると口にする人もいる。極端な例であるが。
BSCの4つの視点でいけば、財務の視点はIT領域ではないので、顧客、業務プロセス、学習と成長の3つの視点をより明確に検討すればよい。
ところで「ITインフラ」は学習と成長の視点に入っていると記載されている書籍もあるが、経験上からは個々の戦略目標からITソリューションを引き出すほうがやりやすい。
次に戦略目標からITソリューションを導く手順に進む。
■本論 2 BSC 戦略目標からITソリューションを導く
次に戦略目標の整理と内容のイメージなどの統合が行われると、各戦略目標を一覧に列挙する。
戦略目標の実行イメージについて再度検討し、ITでの支援・実現を検討する。この段階では、該当するITは導入済みであるか、否かや、具体的なアプリケーションやハードはなにかの検討には入らない。
先の戦略目標を例にとれば、
「顧客ニーズの把握」は
「現在、自社の営業部隊が担当する既存顧客から要望をくみ上げる仕組みが必要である。つまり自社の取り扱う製品・サービスに関わる要望や自社のビジネスチャンスとなるような潜在ニーズを情報として一元化し、いつでも閲覧加工ができるシステムが必要である。入力や出力方法、データ管理が簡単にできるものを導入することだ。」
と、まとめあげていく。順次、すべての戦略目標について、ITの概要を出していく。
すべてが出ると重複するものもあるので、つまりAという戦略目標でも、Bという戦略目標でも同じシステムが必要となった場合は、要はそのシステムは、AとBの実現と支援で必要とあるということなので、ひとつに整理する。ITが絡まない戦略目標もあるうるので、それはそれで実行計画レベルに落とせばよい。
ここまでは、自社の戦略実行に必要なITがすべて出揃った状態となる。あくまでも戦略的なITということである。現実の商品としてのアプリケーションはなにか、ベンダーはどこかは調達フェーズの項目である。
■本論 3 導いたITソリューションと現状ITとの整合を図る
本論 2までで、必要なITは何かが概要レベルですべて出てきたことになる。しかし、
このまま導入の検討に入れるわけではない。日常の業務レベルのITの現状評価が必要であるし、加えて、理想的なITを使いこなせるのか、IT成熟度の評価はなされていない。コンピュータシステムが利用され始めた何十年も前から、「使いこなせないコンピュータシステム」「動かないコンピュータ」の話題は尽きない。経営者の想いと現場のITスキル、体制の狭間で泣いているベンダーセールス、SEの悩みはここにある。
調査すべき点は2点である。まず第一に「戦略的ではない」日常オペレーションでのIT活用状況の把握である。これは各業務部門での不具合や要望をまとめることである。一般的な調査項目でヒアリングを行い、原因調査、将来への影響度などを整理すればよい。
2点目はIT成熟度であるがこれも個人や組織のITリテラシーなど調査項目はいくつかの手法があるので活用すればよい。ここで肝要なのは、戦略的に導入活用したいITソリューションの実現可能性である。現状ITの改善内容やIT成熟度を加味して、3年計画レベルでの導入計画を策定する。
■結論
ITソリューションを導き出し手順として、BSCを利用することを説明してきたが、BSCを
活用するには、事前準備というハードルが高いともいえるし、企業側のトップから一般社員までの納得が必要で時間もかかることになる。一般的にBSCの活用が広まらないには上の理由によると考えられる。
しかし、経営戦略の企業内での認知促進や共有、各自の役割理解などBSCの有効活用面は大きいと考える。社員が私の勤めている会社はどっちに向かっているか、私の仕事はそれのどの部分を担っているかをわかっていることは企業力の源泉といえる。
ITに関していえば、導入すべき、あるいは改革すべきITは社員にとって、「仕事が増える」「新しい物に取り組まなければならない」という負担を感じている面もある。
戦略とITを有機的に結び、可視化できるという意味において、BSCの導入活用は十分メリットがあると考える。以上、ITソリューションの探索方法として、BSCの活用を提案したい。
ITコーディネータ 河野 順一

