中堅・中小企業におけるCIOとしての役割とは |
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2007/03/31 |
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■はじめに
CIO(Chief Information Officer:情報化担当役員)という機能・人材は、大企業においては位置づけられ機能しているが、中堅・中小企業においては、存在していない企業や存在していても十分機能していない企業が多いのが実状である。しかし、今日、中堅・中小企業においても競争力を強化し勝ち残っていくためには戦略的なIT活用は必須であり、それを推進する人材も必要不可欠になってきている。 そこで、CIOとはどのような機能を果たさないといけないのか、そのポイントについてCIOを育成する研修の講師を担当した経験から説明したいと思う。 ■CIOの役割 CIOとは、Chief Information Officerの略で、最高情報責任者、情報化担当役員と訳されます。これまで経営者や役員はITについてわからない人が多く、また、情報システムを担当する責任者は経営のことがわからないという状況であったが、今日、戦略的な情報化の重要性が高まり、経営と情報化の両方がわかり戦略的情報化を推進統括する人材の必要性が益々高まっている。それは大企業のみならず、中堅・中小企業においても、競争優位を保つための経営戦略・経営改革のための戦略的情報化が重要となってきており、これを実行推進できる人材がいない現状から、その必要性が益々高まってきている。 では、CIOとはどのような役割をもつのだろうか。大きく次のように考える。 1.戦略的情報化は経営戦略ありきである。よって、経営戦略策定を経営者とともに 実施する。その際、どこをIT化すれば、その成果目標達成に最も効果を発揮するかを 検討する。 2.策定された経営戦略に基づき、戦略的情報化を策定する。 3.策定された戦略的情報化企画に基づき、プロジェクトとして計画から実行、そしてIT導入 までマネージメントを行い、導入後も成果モニタリングを通して、企業が継続的成長発展 をするようにPDCAサイクルを回すように推進する。 では、それぞれについて、方法論やスキル等の詳細はまた別の機会にするとして、ポイントを以下に述べる。 ■経営戦略策定 1.成功の3条件 会社が成功するためには、3つの条件があると考える。第1は会社の目標をしっかり定めることである。どういう会社を目指すのか、会社の成し遂げたいこと、ビジョンを描くことである。売上や利益目標など具体的に会社の目標を指し示すことが重要であり、経営者が示すべき目標である。 第2は会社の現状を認識することである。現在、会社はどのような状態にあるのか、会社の強みは何か、弱みは何か。また、外部の環境変化により予想される機会はどんなものがあるか、逆に脅威となるものに何があるか。会社の内部環境・外部環境を分析することである。以外と自社の強み、弱みはわかっているようでわかっていないことが多い。あまりに近すぎて当たり前になっているので、それが他社から見て強みであっても、中からは気づかないことが多いものである。 第3は目標へ向かう熱意・情熱である。いくら目標があっても、社長以下全社員がそこへ向かう熱意・情熱がなければ成し遂げられない。社長だけがあっても、あるいは社員だけがあってもできない。全員が目標を達成しようという熱意・情熱を持って取り組まなければならない。 これが成功するための3条件である。このうちのどれかひとつが欠けても成功することはできない。 2.4つの合意形成 3つの条件が揃ったら、社長と社員全員が合意形成することが大事である。その大事な合意形成に4つあると考える。 1つ目は目標である。社長も社員も全員がその目標を自分の目標として捉え、全員で向かうべく合意することである。 2つ目は現状認識。会社の現状は「?である」ということを全員で正しく認識することである。 3つ目は目標を達成するために、あるべき姿、達成すべき課題である。経営目標を達成するためには「?するべき」をしっかり定め、合意することである。 4つ目はそれを実現するために「?する」という行動計画である。「?するべき」を掲げただけに終わらせないように、具体的な行動計画を立てて全員で合意することである。 この4つをまとめたものが経営戦略企画書である。 CIOの役割は、この3つの条件と4つの合意形成による経営戦略策定において、常に参画し何のための情報化であるかを十分認識し、情報化により最大の成果を挙げられるようにIT知識を踏まえ、提言していくことにある。ここをポイントとしておさえていないと何のためのIT化がわからなくなり、折角作っても経営に役立つシステムとならない。そのために常日頃から会社の状況を認識するとともに、経営とITの両方に関しての知識や世の中の動向について学習研鑽する必要がある。 ■戦略的情報化企画 上記により策定した経営戦略企画書に基づき、次に戦略的情報化企画を策定するのであるが、では、戦略的情報化とはどの様に考えればよいか。 それには、それぞれの企業のIT化のレベルによるが、まず、ITが動かないレベルであれば正しくシステムが動くレベルにしなければならない。実はまだまだ中堅・中小企業においては、システムが動かない、一部しか使っていないという企業が多くある。そのような企業は、まず最低限、システムが正しく動くレベルにしなければならない。次に業務を効率化するというレベルである。業務が効率化され人件費などコストが削減されるという効果を生むレベルである。 しかし、周りの企業も同じようにシステム化を行っている今日では、業務効率化に留まらず、業務改革と一体となった情報化が重要なのです。本来、あるべき業務プロセスの実現を促し、支援するためのIT活用です。業務改革とITは別々になされるものではなく、一体となってこそはじめて実現されるものです。 そのためには経営目標実現のためのあるべき業務プロセスをトップダウンで設計していかなければなりません。それをITによりスピーディに、より低コストに実現するのです。 よいシステムとは経営目標の達成に役立つシステムであり、経営課題の解決を促進し支援するシステムです。そして、経営目標に至る、あるべき姿や経営課題解決の達成度合い、指標をタイムリーかつ正確に捕捉するシステムなのです。 ■プロジェクトマネージメント 戦略的情報化企画が策定できると、それをプロジェクトとして計画から実行を行い、ITシステムの開発から本番稼働まで、目標を達成できるようにマネージメントし導かなければならない。またシステム導入後もシステムが正しく稼働しているか、当初の目標成果を達成できているかどうかをモニタリングしていく必要がある。そのためには、プロジェクトマネージメントについて、知識、スキル、ツールや技法を身につけプロジェクト活動に適用していかなければならない。 知識はPMBOKの知識体系が代表される。また、マネージメントスキルについては、リーダーシップやコミュニケーション力や交渉力などが挙げられる。ツールや技法では、CPMやWBS、EVMなどの様々なツールや技法があり、それぞれの用途・目的に応じて活用する。それぞれの具体内容は今回省略するが、これらの知識・スキル・ツール等を活用し、プロジェクトの品質、コスト、タイムをバランスさせながら、すべてのステークホルダーが納得と共通認識ができるように推進し、プロジェクト目標を達成させることが、CIOとしての重要な役割である。 ■企業の推進エンジンたるCIO ここまで説明してきたように、CIOは経営者とともに経営戦略を策定し、経営目標を達成するための経営課題と行動計画をまとめ、戦略的情報化の企画および実行により経営目標を最も効果的に達成することが役割なのである。まさにその推進役であり、エンジンである。そのために必要な知識やスキルを身につけるのである。 特に今日、戦略的情報化が企業にとって経営目標達成のための重要成功要因になっていることが多く、戦略的情報化の構築そのものが経営目標達成には不可欠な状況において、CIOの役割はますます大きくなっている。私達ITCは、企業の継続的発展のためにいろいろな場面で支援をさせて頂くが、まさに外部からCIO的に支援をするといっても過言ではない。ITCの役割や期待がさらに大きくなっている中で、一つ一つの企業支援のITC活動が重要な役割を果たし、ITCの存在価値と知名度を高めていくものと確信している。 ITコーディネータ/吉村 哲也 ラベル: ITC |
中小企業における内部統制とIT化について |
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2007/03/17 |
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ITコーディネータ 武島 直行(No.00002711)
はじめに 2008年J-SOX法の施行に伴い、昨今では金融業界のみならず、あらゆる業種の上場企業では当該法律に対応する方策や試行を通じて、“内部統制”という亡霊につきまとわれているように見受けられる。 一体、J-SOX法のどこが大変で、何故いまさらながらに“内部統制”なのか? そもそも、上場するためには、一定の水準以上の財務力やビジネスモデル及び組織管理能力(内部統制も含む)が備わっていることを厳しく審査され、毎期毎に報告するというサイクルで運用されていたように記憶しているのだが... 一方で、上場企業をはじめとする世間では一流と称される大企業の騒動を間近に見ている中小企業においても他山の石的に傍観はしていれない、と考えるのは起業者を中心とした中小企業家の一致した見解と思われる。 今日は、先に触れたJ-SOX法の対処についてではなく、中小企業をはじめとした、一般の企業において、なすべきことを定められたルール通りに行って、その行為が法規範にも触れていないことをチェックしていくサイクル作りをどのように考えて行えば良いか、に関して触れようと思う。 序論 “有るべき姿”とは、“なすべきこと”とは どこの会社に伺っても大抵は「経営理念」や「経営方針」とか「社是」のようなその企業が企業活動するにあたって理念なり、目標とすることなり、方向性なりを簡単にまとめている。 これを実現するための社員の行動の標として「行動規範」や各種の規則・規程を作成している。最も、社長が行動規範だ、という企業も確かにある。いずれにせよ、何らかの物差しをもって活動を行っていることは確かである。 すなわち、企業の理念の中に“有るべき姿”を見出し、その活動の拠り所・考え方の中に“なすべきこと”を見出すことができそうである。 では、そこに見出す企業の姿が社会にどのように映っているのだろうか? また、その活動の正当性はどのように確保されるのだろうか? ここには、企業活動と社会との関連、例えばその企業の設立「意義」・「存在目的」がどのように意識され、どのように実践されているのか、ということが問われているように思う。 以降、企業活動の成り立ちから運営、ビジネスモデルを通じて、その企業の目指すところとITの位置づけといった流れで考察を進めていこうと思う。 本論1 「起業にあたって」 どのような規模の企業でも、初めから存在したわけではない。必ず、起業者がいて、少しずつそのビジネスモデルを確立していき、社会での認知度を上げて、今日の成功を収めている、と考える。 起業に当たって、その考え方は千差万別で、必ずしも社会への貢献や利益をもたらすことを目標としているとは言えない。単に、会社勤めが性に合わないから起業した、あるいは、自分のやりたいことをするために起業した、ということも十分に考えられる。ここに共通することは、いずれも既に確固としたビジネスモデルすなわち利益をあげる仕組みを見出し、その実践において単独あるいは少人数で行う用意がある、ということか。 だが、そのような会社?でもその事業規模が拡張するに及び、規模はともかく、組織を作り、これを運用していく過程を踏むことになろう。大方の起業はこの辺りで転換期を迎えるものと思う。 さて、話を元に戻そう。「起業」するにあたって、経営者は自分の思いを“経営理念”に活動の方向性を“経営方針”等にまとめていく。そうでなくとも、何らかの意思表示を“文字”に表すであろう。この時、社会に貢献する、あるいは、自社が繁栄することで社会に何らかの貢献ができる、などの言葉がキーワードになっているように感ずる。そうなるとその行動規範も反社会的にはならないだろうし、どこの企業も同様な内容になっているものと考える。 そうすると、それに基づいて活動している企業人が何故、反社会的行動を犯さなければならないのだろうか? それとも、当該反社会的行為をそのように思えなくなってしまっているのだろうか?この点に関しては心理学的な犯罪学的な要素も多く、今回の考察には不向きと考えたく、ここでは割愛したい。 本論2 「ステークホルダー」 今、巷で話題になっている上場企業の悩みの多くは株主をはじめとする利害関係者(ステークホルダー)との関係、特に株主との位置づけが俄に重要視されてきていることと、情報の公開に関する今まで経験したことのない責務への対応の仕方を模索していることにあるように感じられる。 最近の事件の多くは、株主をはじめとして社会に対する情報公開(従来は財務報告が中心であった)における虚偽が中心で、これを企業ぐるみで行っている点である。あるいは、見た目を良くしたいが為に利益操作を行なう、という事件が多発しているようである。 実は中小企業においてもこのことは他人事ではない。むしろ、大企業よりも如実な問題ではないか? 金融機関からの貸し付けを可能とするのは、その企業の財務体質であり、株式を公開していない限り財務報告は不要だが、どのような企業でも納税時には最低限の財務会計資料を提出しなければならず、収益をあげているか否かは明確になる。 先に触れたが、企業の存在意義によってはここで“待った”がかかると言っても過言ではない。 毎年赤字を出し続ければその企業では納税はおろか、社員に給与さえ支払えないこととなり、社会的にはその企業の存在価値は無くなっている。当然に淘汰されていくと思う。 これまでは、利害関係者として外部、例えば株主や出資者ばかりが取りざたされ、内部の利害関係者(社員等)や広い意味での外部、すなわち社会全体といった部分への考慮がなされていなかった場合が多い。 従って、世間にあるいは公的組織への報告すなわち財務報告に心血を注いできたと言っても過言ではなかろう。 ここでは、ありのままの姿を見せることが重要で、誤っても虚偽や隠し事は言語道断であるということは自明の理であるにもかかわらず、何故後を絶たないのであろうか? 利害関係者の枠を本来あるべき姿に捕らえ、その中で誠実に企業活動を行っていくにはどのようにすれば良いのか、これはあらゆる企業家の悩みなのではなかろうか。 本論3 「なすべきこと」 企業は収益をあげることが史上の使命である。 その収益は、企業がさすべきことを当然に行って、有るべき姿に向かっていくことで積み重ねていくことが理想であり、また、そうでなければ存在し得ないと前にも述べた。 では、「なすべきこと」とはどのような事でどのようにすれば見つけられるのであろうか? 大相撲で“強い”力士には共通点がある。それぞれが、このように取り組めば九分九厘勝てる“形”を持っていることだ。別に必殺技ではない。立ち会い・組み方や得手不得手も含めて、この形に持ち込めば勝算が格段に上がる、という形。当然、最初からその“形”に持ち込めば楽に勝てる、ということだ。 企業活動においても同じ事が言えないか?巷で言う、“ビジネスモデル”などはその類ではないかな。 その企業の得意技だけで勝負できれば、ほぼ負けることはないだろうが、相手も取り口は研究してくるし、相手の不得手を突いて勝負してくるだろう。そのためには、将棋のように相手の差し手を予想してそれぞれに対する差し手を考えて、如何に自分に有利な展開に変えていくか、すなわち、自分の得手の世界に引き込んでいけるか、がポイントで、そのための組織活動が「なすべきこと」であり、そのパターンこそが、当該企業の“ビジネスモデル”になっているのではないかと考える。 したがって、“ビジネスモデル”が明確で判りやすい場合にはその遂行に関して、細かいルールや決め事を付加していけばよい。そうでない場合には、まずは自社の収益の構造を分析し、理解して、ここで勝負するための企業活動を探って、“決まった形”を創造する必要がある。それは、無理をすることを強いるのではなく、無理なく進められる内容、すなわち多少の余裕をもって行えることが望ましい。実際には想定通りには進まないもので、そのような場合に無理が効かないと絵に描いた餅に止まってしまうだろう。 私もいろんな企業あるいは個人のビジネスモデルに遭遇してきた。別の機会にこれらを紹介できたらと思う。 まとめ 「自浄作用」 企業の行動原則に関して考察してきたが、人間全てが“善”であることは考えられない。いや、そうであるとしても24時間365日“善”であることには想像もつかない苦痛が伴うのではないか?残念ながら私も弱い人間で、1日の内で“善”で有り続ける時間は数時間としか言えない。“悪”になると言う意味ではないが、よく、“?しておけば、すれば良かった”と後悔する場面では“善”になりきれなかった事に対する反省が占める割合が多いように思う。 どうすれば、この人間の欠陥?を補佐できよう? 人間も千差万別であることを考慮すれば、全ての人間が同じ事、同じ機会に同じ苦痛や悩みを持っているとは考えがたく、須く個人差があって然り。 と言うことは、他人にチェックされたり、見て貰ったりするポイントがあっても良いように思う。 ここに相互チェックの意味合いが生まれるのかな。 人間の弱さの比重でこの相互チェックを何十にも重ねていけばよいのではないか。 これが内部統制に通じる考え方ではないかと思う。 要は“なすべきことを”あたりまえに行うことと、行えるように手順(ルール)を決めること、そして、この仕組みが円滑に動いていることを他人の目でチェックし、是正し、改善していくことが内部統制の考え方といっても良いように考え、私はその仕組み作りを中小企業家と行っていく考えである。 追記: この一連の仕組み作りの中でいかにしてIT技術を活用できるか、ITCとしては悩みの種ではある ラベル: ITC |
「検証ユニット方式」の実践によるITC収益モデル例・4 |
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2007/03/03 |
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<はじめに>
これまでの考察で、われわれ“まいどフォーラム”が提唱する「検証ユニット方式」がITCの収益モデルとしていかに有効であるかという3つの具体例を挙げた。 ここまでは、検証ユニットの初期段階(1回転めから3回転めくらいまで)に比較的重点を置いてきたが、今回は、ユニットが4回転め、あるいは5回転め、すなわちIT化のプロセスが中盤以降にさしかったD社(不動産の有効活用支援)の事例を取り上げてみたい。 Y氏が関与しているのは、D社の事業の中でも特に有人立体駐車場の管理事業である。業界全体としてもほとんどIT化の顧みられない分野で、せいぜいPOSシステムを導入するくらいしかIT活用の取っかかりはないと思われた。 D社における検証ユニットの1回転めから3回転めくらいまでの経緯は、これまでの3つの事例とほぼ同じであるので、本事例ではその詳細は省略し、4回転め以降、Y氏の関与を通じて、D社の経営トップがどのようにITを企業文化として深化させていったか、そのプロセスを追うことにする。 <1回転めから3回転めまでの概要> 有人立体駐車場では、料金計算やPOSレジをきちんとシステム化しているところは極めて少数派である。平面の駐車場は、無人化することによって人件費節約効果が大きいため、システム化が進んだのであるが、立体駐車場のほうは、安全管理面の事情から「どうせ人が必要なんだから人にやらせたらよい」という発想になっていたのである。 Y氏は、このシステム化の遅れに注目し、料金計算とPOSレジ機能を一体化したシステムの導入をD社に提案し、その開発過程においてベンダーを指揮し、複数駐車場の顧客(車両)一元管理を軌道に乗せた。2回転めでは、利用者の利便向上に大きく寄与するマイレージポイント制の導入を提案、3回転めにはタイムカードシステムまでを統合した労務管理システムの開発をプロデュースした。そのプロセスがすべて順調に推移したために、D社の経営者は、ITの有効性を高く評価し、さらなる活用方法を自ら模索するまでになったのである。 <4回転めの留意点> 検証ユニットも3回転めを終えるころになると、どんな懐疑的な経営者であっても、IT推進者たるITCをかなり評価してくれるようになっている。疑り深ければ疑り深いほど、目の前で実際にやってみせたときの「目から鱗」状態は劇的であるともいえるのである。 そうすると今度は、特にITCがITの効用について説得しなくても、「ITでもっと他にやれることはないか」と経営者自身が自発的に考える姿勢になってくる。「自律成長過程」とも呼ぶべきフェイズ、ITCにとってはとても仕事がやりやすくなる時期がくるのである。 経営者は、これまで否定していた「流行りのツール」を、「華美な宣伝文句」に踊らされて、突如としていろいろ試してみたくなったりすることになる。ITCとしては、これはこれで困りものなので、うまいこと手綱を締めてかかる必要が出てくるのである。もちろん、本当に良いツールであれば、経営者といっしょになって積極的に検討すべきなのは言うまでもないが、“まがい物”も多いので要注意である。 D社で社長が自ら取りかかったのが、ネット経由で動作するPOSレジの拡張機能としてのウェブカメラであった。Y氏はカメラには疎いので、はじめは導入に消極的だったが、D社社長の言うには、駐車場のオーナーは、防犯対策としてのカメラには非常に興味を持つのだということであった。さらにD社社長は、自社の駐車場利用者がネットで一元管理できる強みを活かして、「ある駐車場で月極契約をすると、別の駐車場の時間貸しが無料になる仕組み」を考え出した。事業を営んでいないと思いつかない一種の発明(実際にも特許出願中)といえ、これにはY氏も舌を巻いた。 <4回転めの仮説> 4回転め(5回転め以降も同様)に入ると、経営トップがすでに納得し、自ら推進するフェイズに入るのであるから、ある意味(経営者からITCとしての手腕を評価していただくという意味)では、検証作業は重要ではなくなる。失敗は失敗として、そこから学び、企業文化としてITが定着しているお手伝いをするのがITCのミッションになってくるという具合に、仕事の中味が変質してくるはずである。利益向上に寄与すればIT化は成功、寄与できなければ失敗という、杓子定規な判断から脱皮しなければならないのである。事実、Y氏が関与して以降、D社の業績は順調に伸びており、もはやY氏自身も、ITの実効性という面での評価は求めることもなかった。 そこでY氏は、D社社長に、経済産業省の推進事業である「IT経営百選」に応募してみることを勧めた。「これまで積み上げてきた自社のIT文化がいかにすばらしいか、あるいは、どこが欠けているか」に関して、外部の評価を受けてみることを勧めたのである。 あたりまえのことであるが、単に儲かっているとか儲かっていないとかいう基準では「IT経営百選」には入れない。ITを有効に活用して経営の改善に結びつけているか否かが有識者によってチェックされるのである。もしこれで入賞できたとすれば、D社のIT化は一過性のものではなく、企業に文化として根づいていることが客観的にも裏付けられることになる。この提案はD社社長にも快く受け入れられ、D社の「IT経営百選」応募が決まった。 <結論> もしD社が「百選」から漏れていたら、Y氏の提案してきた数々の仕組みは「儲けにはつながっているけれど、会社の文化としては根づいてない」という評価になったわけである。しかしY氏の確信どおり、D社は、「IT経営百選」において最優秀企業に選ばれ、社名とともに評価項目毎の得点までが全国に公表された。今後のIT化の貴重な指針が得られたと、D社社長も至極ご満悦だったのは想像に難くない。 このように「検証ユニット」にしたがって、ITCが、ユーザー(企業経営者)の猜疑心を無理なく少しずつほぐすようにIT化を進めていくと、当然の流れとして企業IT化は自律成長過程に入る。またそれを外側から歓迎して支えてくれるようなムードや枠組みも、ちゃんと国が用意してくれているわけである。さすが、“e?Japan”を標榜するだけのことはあると言うべきであろう。 ITCが、国策としてのIT化推進の流れをしっかりと踏まえ、それに呼応するかたちで、中小企業企業のIT化を進めていくならば、“三方良し”の結果が待っている。「検証ユニット」の初期の段階では、ITCは単なる便利ツールとしてITを企業に伝えてよいのであるが、中盤以降では、経営者のマインドの変化も読みながら、企業文化としてITを根づかせていく意識が欠かせない。本事例はその教訓となる好例であろう。 ITコーディネータ/永田祥造 |

