寄稿するには

2006/3/30

■寄稿方法について

当Forumは開かれたフォーラムとして、外部からの投稿論文を歓迎します。
論文の範囲は、企業経営とビジネス向けのIT活用に関わるもので、とりわけ中小企業のIT化に資するもの、またはその導入のための方法論について考察されたもの、実例、失敗例を歓迎します。書評なども歓迎します。自社IT商品の説明なども結構ですが、単なる商品説明で終わらないようにご注意願います。掲載の判断は、当Forumの規約に基づいて行われます。
また、寄稿いただくと共に当Forumへの入会をお願いいたします。書式については、テキスト文や簡単なHTMLタグで装飾されているものを歓迎します。(パワーポイント等は載せにくいので)

■ITC知識ポイント獲得のための論文発表について

ITコーディネータ協会の知識ポイント獲得のガイドラインの中に、研究論文執筆に関するものがあります。(参照)「ITC専門知識に関する原稿発表及び学会発表及び書籍の執筆」という長いタイトルがついていますが、以下の条件を備えていれば、形式的にはパスするようです。

  1. 企業・団体が顧客向けに提供するホームページ・メールマガジン であること
  2. 2000文字以上であること
  3. 執筆者の氏名、ITコーディネータ(補)資格をもつことが明記されていること
  4. 執筆者の氏名、ITコーディネータ(補)資格をもつことが明記されていること
  5. 著作物は社会的に認知されたレベルのものであること

現時点(2006年3月)では、既に長文の投稿1件がポイントとして通過しており、さらに数件の投稿が寄せられています。
このポイント獲得制度はセミナーや勉強会のように時間や場所の制約がありませんので、地方在住で勉強会やセミナーに出ることができない方には是非活用していただきたい制度です。MAIDO Forumの会員であれば誰でも本ホームページに投稿することが可能です。会費は無料、顔をあわさないネット上だけの会員も多数存在します。
セミナーは時間が合わないし、事例発表もできない、だけどいろいろ発表したいことはあるという方は、入会方法のページをごらんいただき、入会されることをお勧めします。

2004年8月13日 MAIDO Forum世話人会(最終更新日2006年3月30日)

「検証ユニット方式」の実践によるITC収益モデル例・2

2006/3/12

──専門家派遣制度を活用した成功事例──

<はじめに>
 独立したばかりで実績がほぼ皆無に等しいITCが、何の信用もない状態で、企業と顧問契約を結ぶに至るプロセスにおいて、われわれ“まいどフォーラム”が提唱する「検証ユニット方式」がいかに役立つか、その実践的手法について前回の論文で考察した。
 今回は、「検証ユニット方式」の実践にあたって、その第1回転めに専門家派遣制度(各都道府県に設置された中小企業支援センター等が実施する助成事業)を活用し、より潤滑に契約獲得に結びついた事例を紹介したい。
 前回同様、仕事の発端はささいなキッカケである。本事例(B社とする)は、新米ITCのY氏が、個人的な友人のWさんからB社の専務を紹介され、「とりあえず話しだけは聞いてやってもいい」という程度の了解で会社訪問することができたのであった。

<1回転めの留意点>
 検証ユニット方式では、「はじめに成果ありき」が原則で、第1回転めにできるだけクライアント企業にコストの負担をかけないことが重要である。これは相手先がITCがについて何も知らず、まったく信用がないという前提に立っている。実際、B社の社長も専務も、Y氏とは初対面であり、経歴や実績等についても詳しく知らされず、明らかに怪訝そうな顔つきで最初の訪問を迎え入れたのである。
 Y氏は、ひととおり自らの強みや仕事の進め方を説明したが、IT化の説明にはどうしても専門用語が多く混じりがちで、それが中小零細企業から毛嫌いされる原因になることも理解している。そこで、あまりITをITとして意識させず、とにかく「公的な制度であること」や「県から補助金が出ること」、「要するに制度を活用すると得だ」ということを強調し、制度の活用を薦めることにしたのである。
 中小零細企業の場合、ITに対してそもそも理解が追いつかない面があるのは事実であろう。1回の訪問で、IT化のメリットを実感してもらうのは困難といえる。かといって、不安心理につけこんで「おたくは遅れてますよ、ヤバいですよ」という論調は厳に慎まねばならない。その点、専門家派遣のような公的制度の場合、中味が理解されていなくても信用されやすいのは事実である。それには甘えさせてもらってよいであろう。専門家派遣制度は、企業側の費用負担が軽い割に回数や時間がきっちりと定められていて、いったん了解されると少なくとも3?5回は会社を訪問して経営陣や担当者と十分なコミュニケーションを図れるというメリットがある。企業の負担より県の補助金のほうが大きいため、コストがかかったという意識はまったくないに等しく、Y氏がよっぽど退屈でないかぎり「なんか得した」という印象が残るはずである。だからこのフェーズでは、3?5回の訪問のあいだに「もっとつきあえば、もっと得なんだ」という確信を相手に与えられるかどうかが重要となる。そのためにも、「お金をかけずに手っとり早く改善できる工程はどこか?」を見つけ出し、派遣終了後に取り組んでみたくなるような具体的な提案を出せることが不可欠といえる。

<1回転めの検証>
 検証ユニットの第1回転めでは通例、「はじめに成果ありき」の原則に基づいて、ITCにもある程度「汗をかく」ことが求められる。しかし、専門家派遣制度は純粋な助言事業であるから、専門家自身が自ら「手出し」をしてデータベースを設計したり、ホームページをデザインしたりということはしない。したがって、専門家派遣制度による助言活動を第1回転めとした場合、机上の空論が先行してしまう恐れがあると言わざるを得なくなる。そこでY氏は、「即効性があって明らかに目に見える成果」は何かと考え、キーボードショートカットを使って入力速度を上げさせたり、フロッピーディスクの使用を禁止してLAN上でファイル共有を学ばざせたり、プロバイダを低価格なところに乗り換えて通信費を節約したりといった実践型のアドバイスも忘れなかった。わずかとはいえ、それでも月額換算で1万円程度の費用が浮いたのである。さらに一方で、助言活動の成果物として、現状の基幹システムの非効率を指摘し、事務員4名の人件費の無駄が月額換算で合計10万円を超えるという実証データを経営者に伝えた。

<2回転めの留意点>
 Y氏は、現行のシステムが導入から6年を経過していることや、ソフトを開発したベンダーが倒産してサポートを受けられない状態であること、業務の流れにシステムが合わなくなり、必然的に数々の弊害を生んでいることなどから全面リプレースを急ぐ必要があることを痛感していた。さいわい、助言活動を通じて社長や社員にもシステムの弊害が理解されている様子であった。
 B社は、文房具を中心とする事務用品を扱う卸問屋で、従業員は12名。うち4名が女性の事務員であった。事務員は、商品の梱包や棚卸しなどの業務も行うが、一日の大半はパソコンに向かってデータ処理に費やしている。業種特性として、他品種で小ロット、商品単価が低いがデータ数は大量であるため、データ入力業務の負荷が非常に高く、システムの不具合によって被るロスは非常に大きかった。
 専門家派遣制度を利用すると、企業の負担する金額の3倍の報酬がITCに入ることになるので、その間は“成果>コスト”の実現は容易である。1回転めが終わった段階で得られた「小さな信用と小さな報酬」をテコに明確な課題を経営者に示すことができていれば、次に訪問する名目はとりあえず得られる。
 ここではシステムの全面リプレースという大型の提案を掲げて第2回転めに入るわけであるが、今回のケースでは、この第2回転めが事実上の1回転めだと考えなければならない。すなわち、まだ目に見える形での成果が乏しいために、提案にも説得力が乏しいのである。Y氏には、リプレースを実行すれば相当の効率化ができるという確信もあったが、性急にそれを進めたのでは従業員の意識が追いつかないことも明白であった。

<2回転めの検証>
 そこでY氏は、後に販売管理システムとも連動することになる見積書作成システムを先行して導入することとし、その間のシステム費用(開発費まで含む)は自らが肩代わりして無償とすることにした。従来は見積書作成システムは存在せず、毎日のように営業マンがワープロソフトを使って各自で作成していたため、B社にとっては「うまくいったら儲けもの、うまくいかなくても損はしない」という筋書きである。無論、導入過程でのY氏のコンサルティング・フィーも無償である。
 それだけのリスクを背負ってでも実現したかったY氏の狙いは、男性営業マンたちが新しいシステムで効率よく見積書を作成している真横で、女性事務員たちが従来のシステムで納品書発行に悪戦苦闘しているという対比を、全社員に「見せつける」ことであった。見積書を作成するために使用する品名マスターは販売管理で使用するものと同じであるし、入力手順もほとんど同じである。「これができたらあれもできる」式にB社を納得させることを狙ったのである。
 見積書発行システムは、従来のシステムから商品マスターを移行する作業に手間取り、着手からサービスインまでに2ヶ月、そこから営業マンを教育し、軌道に乗せるまでに3ヶ月を要した。しかし、いったん慣れてしまうと、6年前に導入された従来システムと比べてレスポンスが格段に速く、効率の差は歴然としていたために、「早く販売管理のほうも新しいシステムに替えてほしい」という声が事務員さんたちから上がるまでに、さほど時間はかからなかったのである。

<3回転めの留意点>
 Y氏が最初にB社を訪問してから8ヶ月、Y氏の訪問回数は20回を超えていたが、Y氏はB社に対して直接費用を請求したことは1度もなかった。しかし検証ユニットの3回転めには、IT化は企業の中枢的な基幹業務に及んでくる。経営トップの業務改善にかける意気込みを確認する意味でも、基幹システム構築に必要な予算組みを行い、さらに自分の貢献度に見合う報酬を正当に要求していくことが肝要となるのである。
 見積書作成システムを実際に動かしていれば、その仕組みを販売管理全般に応用したときにどれくらいの効率化が図れるか、それくらいのソロバン勘定は経営者の頭の中にできている。Y氏はそこへさらに、経営戦略策定という新たな着眼点を与え、中期的にはネット上での受注システムとも連動する営業支援ツールとして活用していくのだというビジョンを示した。
 このフェーズでは、これから後にも常に“成果>コスト”が成り立ち続けることをアピールすることが大切である。IT化とはすなわちITを企業文化として熟成して根づかせていくことであり、外部CIOとしてのITCが抜けたらその戦略構想全体が骨抜きになってしまうというくらいの存在感を示す必要がある。少々「脅し」気味になってもかまうことはない。ここでいかに自己の役割を大きく見せられるかどうかが、継続的な顧問契約を結べるかどうかの分かれ道になるのであるから、背に腹は代えられないであろう。

<結論>
 小規模事業者は、大企業のように何人もの専門家を雇うことは不可能で、せいぜい1人か2人のインテリジェンスが「よろず相談」の窓口になっているという現状は前回も述べた。フリーで独立することを志すITCは、ITを切り口として、まずこの役割を果たすことが求められるのである。われわれ“まいどフォーラム”は、そこにITCの活躍すべきフィールドがあると考え、そのために極めて有効なツールとして「検証ユニット方式」を提唱するのである。
 結果としてB社では、Y氏が最初に訪問してから11ヶ月後という早さで基幹業務の全面リプレースに成功した。ハードの選定と調達、ネットワークの構築、ソフトの設計と開発、ウェブサイトのリニューアルとマーケティングへの活用‥‥等、ITに関わるあらゆるB社の意思決定がY氏のアレンジメントによって行われ、当然Y氏は、めでたくB社と顧問契約を締結することができたのである。

ITコーディネータ/永田祥造

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「検証ユニット方式」の実践によるITC収益モデル例

2006/3/11

<はじめに>
ここでは、独立したばかりで実績がほぼ皆無に等しいITCであるという前提で、すなわち名前が売れているわけではなくブランド力もない、つまりITCという資格がある以外には何の信用もない状態で、企業に入りこんで契約を取っていくためにはどうすればよいか、その過程で、われわれ“まいどフォーラム”が提唱する「検証ユニット方式」がいかに役立つか、その実践的手法を考えてみたい。
 個人で活躍する多くの独立系ITCにとって、仕事はほんのささいなキッカケから始まる。友人の勤め先、親戚のコネ、前に努めていた会社の取引先‥‥等、である。本事例(A社とする)は、新米ITCのY氏が、某異業種交流会でA社の社長と名刺交換をしたところから始まる。2度、3度と顔を合わせて世間話をしているうちに、「ちょっとウチのシステムを見てほしい」という話題になり、とりあえず会社訪問することができる運びになった。

<1回転めの留意点>
 検証ユニット方式では、「はじめに成果ありき」が鉄則で、第1回転めにできるだけ相手にお金を使わせないことが特に重要となる。つまり、「お金をかけずに手っとり早く改善できる工程はどこか?」に神経を集中すればよいことになる。
 とりあえず「ただ働き」の覚悟が必要で、実際に「骨折り損のくたびれ儲け」に終わることもないとは言えない。しかし、もともと情報が入りにくい小規模事業者の場合、「ちょっとここを直せばすぐに経費削減(または売上アップ)に直結するポイント」というのは案外簡単に見つかるのである。
 A社の場合は、ネットによる通販がまったく活かされていないことであった。A社は、自社ブランドで海産物を製造加工販売しており、業者向けの卸と個人顧客向けの小売が半々の中堅企業である。地場では知名度もあってローカルなブランドとしては一定の地位にある。A社は過去に、大手のショッピングモールに出店したこともあるし、ホームページも相当な金額で開設している。ただ、時期が早すぎたことも災いして、コストばかりが大きくて成果が伴わなかったのである。
 このように過去にやけどをしている会社の場合、そこへ「あといくらかけて‥‥」と言い出したのでは即座に門前払いとなる。しかし逆に、「ITは金がかかる」という先入観があるだけに、1円もかけずに先に喜ばせて差しあげる手段がひとつでも浮かべば前途は明るいのである。Y氏の第一印象は、「うまくやればもっと売れるのに‥‥。ああ、もったいない」というものであった。ネット販売で成功するための必須条件である「オンリーワン」をすでに満たしていたからである。
 そこでまずY氏の最初の提案は、報酬を歩合制とすることであった。現に売上が上がっておらず、経費がかかっているのなら、「売上が上がらなければお金はいらない」という単刀直入な提案は受け入れられやすい。現状の売上が5、経費が10であれば、損失は5である。小学生でもわかる単純な計算だが、A社の経営者には撤退の意思はなく、なすすべもなく損失を出し続けている。ここへ、経費を10のまま、売上を5以上に上げる提案を出せば、まずは断られないのである。(売上を5のまま経費を5にする提案もできるが、これは得策ではない。)「これならどっちに転んでも損はない」という意識さえ植えつけることができれば最初の目的は達成である。
 Y氏の第1ミッションは、お金をかけずにネットショップをテコ入れし、売上を伸ばすことである。0円でショップを構築する方法も考えられたが、実際に採ったのは、すでに垂れ流しになっている経費10を、自分のほうへ回させ、売上5を保証する方法であった。「もし売上が下がったら自分が身銭を切ってでも弁済します」と言い切ったのある。ここにリスクがある。リスクはあるが、小規模事業者をターゲットとして収入を上げていくなら、コンサルティングだけでは厳しいのも事実である。ある程度はプラクティカルなノウハウをもっている必要はあろう。リスクをかぶるだけでなく、汗をかくことも求められる。中小企業の経営者には、そもそもそうでないと相手を信用しないというメンタリティーがあるのだから仕方がない。逆に、このくらいの自信と熱意がなければ、ゼロからスタートでは活路は見出せないということである。

<1回転めの検証>
 Y氏は自らホームページのデザインを手直しした。もともとあるページをそのまま使えるので、大きな負荷ではなかった。SEO対策を施し、ログ解析用のスクリプトを組み込むなど、アクセスアップの手法としては基本的なものばかりだったが、A社はそれさえも知らなかった。ホームページの手直しが終わった頃、A社に既存の個人顧客にDMを出してもらうこととした。この際のDMの送料はY氏が負担し、文面もY氏が考えた。つまり、A社は何もしなくてよいわけである。
 さいわい、DMを出した直後に売上は急増し、しかも持続した。この期間のY氏の勉強量と実務上の試行錯誤は相当なものであるが、これらのノウハウは再利用可能な自分のノウハウになるのである。ともかく、これで「このITCに任せたら売上が伸びるかも」という仮説をとりあえず検証し終えたことになる。契約によって、売上の15%を自分の取り分とすることができた。これは毎月毎年継続的に受け取れるフィーであるから、変動はあるもののありがたい収入となる。このお金を再投資して、さらなる売上アップにつなげることもできるし、その他の業務改善に取り組むこともできるのである。

<2回転めの留意点>
 さて、ここまでで得られたA社からの「小さな信用と小さな報酬」をテコに、ここから検証ユニットの第2回転めに入る。このフェーズでは、成果が出ている範囲内でコストを捻出すればリスクがないことを、しっかり説得することができなければならない。経費10で、売上が10なら、儲けはゼロなのだが、Y氏が来るまではマイナス5だったのであるから、儲けはゼロでも成果はプラス5なのである。プラス5のうちの2や3を再投資に回したところで、会社にとっては損になっていないという理屈をしっかり納得させることが肝要である。当面の損失を回避できたからといって、そうやすやすと感謝していただけるほど中小企業経営者は甘くないからである。「単なるお人好し」と判断されてしまったら、足下を見られて「はい、ありがとう。さようなら」で終わる可能性が高い。ゆえに、少なくとも3ヶ月から半年がかりで業務改善と呼べるレベルの経営改革に取り組む意思があるかどうか、そのために多少のコストを捻出する気構えがあるのかどうか、トップの腹づもりを確認しておく必要が出てくる。
 Y氏は、ネットショップの売上アップをテコに、受注処理の効率化に踏みこむことにした。これまでの受注処理は、電話でもFAXでもメールでも、とにかく受注用の紙(決まった様式もない)に書き写して、それをそのまま加工ラインにまわすという原始的なやり方だったからである。少なくともネット受注に関しては、そのまま加工指図書に出力でき、完了と同時に送り状や納品書に出力できる仕様とし、その後、電話やFAXによる受注をネット受注に合わせるかたちにすれば、失敗する心配がないのでA社の納得性も高まると考えた。これなら顧客データベースの一元化もできて一石二鳥である。

<2回転めの検証>
 受注処理のIT化は、着手から9ヶ月かかったが、たいへん大きな成果が出た。Y氏は、はじめにネット受注をシステム化し、電話・FAX受注のステップと対比してどれほど効率がいいかをまざまざと見せつけた。この「見せつける」という意識が小規模事業者には重要である。机上の空論を嫌うメンタリティーがある反面、鼻先にぶら下げられた獲物には俊敏に食いつくからである。いったん見せつけておけば、「この受注処理システムにはだいたい○○円かかりますけど、それ以上の効率化ができるっていうの、わかりますよね?」くらいで通じるものである。
 ネット受注をシステム化するにあたっては、システム開発のための費用がかかり、これはネットショップの売上改善で得られる歩合制の報酬を上まわるため、ここまでのY氏の収支は赤字であった。しかし、すべての受注処理のシステム化を成功させて得られる報酬を合わせればわずかながら黒字となる。検証ユニットでは、2回転めが終わるまで(期間にして約1年)は、儲けは期待しないほうがよいかもしれない。

<3回転めの留意点>
 受注管理が軌道に乗る頃には、A社は、他の業務のIT化を別の業者やコンサルタントに相談しようとは思わなくなっている。逆にいえば、ここまでのステップで辛抱に辛抱を重ね、信頼関係を築いておくことが極めて重要である。3回転めには、IT化は企業の中枢的な基幹業務に及んでくるはずだからである。
 Y氏は、ここまであえて口にしなかった「経営戦略」であるとか「ビジョン策定」「中長期計画」という小難しい言葉をようやく使い始める。経営者の側に戦略という意識がなかった間も、Y氏の頭の中には当然、常に将来ビジョンが用意されていたわけであるから、ここで過去と将来の整合性を語っておけば、さらにY氏の印象は良くなるのである。はじめは聞く耳を持たなかった部課長クラスも、ここまで見せつけられれば、いよいよ本腰を入れて取り組んでくれるものである。
 このフェーズでは、これから後にも常に“成果>コスト”が成り立ち続けることをアピールすることが大切である。「恩を売る」というといやらしく聞こえるかもしれないが、継続的な顧問契約を結びたいのであれば、自分が抜けたら元の木阿弥に戻る危険性を臭わせておく努力はやっておくべきであろう。その上で、基幹システム構築に必要な予算組みを行い、さらに自分の貢献度に見合う報酬を正当に要求していくことである。

<結論>
 小規模事業者は、大企業のように何人もの専門家を雇うことは不可能で、せいぜい1人か2人のインテリジェンスが「よろず相談」の窓口になっている。(それさえも見つけられない気の毒な事業者も多い。)フリーで独立することを志すITCは、ITを切り口として、まずこの役割を果たすことが求められるのではないだろうか。われわれ“まいどフォーラム”は、そこにITCの活躍すべきフィールドがあると考え、そのために極めて有効なツールとして「検証ユニット方式」を提唱するのである。
 結果としてA社では、Y氏が最初に訪問してから1年半後という早さで基幹業務のシステム化に成功した。その手腕を評価されたY氏は、めでたくA社と顧問契約を締結することができ、システム運用を中心としながら幅広く経営革新の相談を受け続けているのである。

ITコーディネータ/永田祥造

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けちけちIT化のすすめ

はじめに

 日本の中小企業やNPO法人でのITの活用は中堅、大企業にくらべて、大幅に遅れているといわれています。特に、関西では、「IT化の有効性」の認識が関東に比べて低いという調査結果もあります。また、「ITの理解、リテラシ」も中堅、大企業にくらべて低い場合が多いのではないでしょうか。

「ITの理解、リテラシ」の低い組織に「IT化の有効性」の認識をしてもらう最良の方法は、ともかくITを使って、「役に立った=コストが下がった、売り上げが上がった」などと実感してもらうことではないかと思います。

では、ともかくITを使ってみてもらうにはどうしたらいいでしょうか?
ITに限らず、自分の知らないもの、新しいものを買うときには、不安があるものだと思います。
「ITってほんまに役に立つの?」
「パソコンやソフトを導入しても、使いこなせへんのちゃうか?」
こういった不安を乗り越えやすくするための一つの方法は、初期コストをできるだけ下げることではないかと思います。

          「けちけちIT化」とは?

本稿でご紹介する「けちけちIT化」(造語です)は
「ま、使いこなせへんかっても、これくらいならええか!」
といえるレベルの初期投資でスタートできるIT化のアプローチのことです。

とくに、われわれMAIDOフォーラムの活動圏である関西の人は総じて「けち」だといわれています。「怪しいものには金をださない。値切れるものはとことん値切る。」という感じです。
これは、ITCが小規模企業を支援する上で最初のハードルになっている場合も多いのではないでしょうか?

ここでは、このハードルを越える一つのツールとして有効な、「けちけちIT化」のちょっとした実践例をご報告したいと思います。

「けちけちIT化」実践のポイントは以下のようなことではないかと思います。

 ・顧客の実行可能性が最重要
 ・成果は小さくてもいい
 ・まずは、今あるものをつかう
 ・必要最低限の性能でいいので、無料、格安のものを導入
 ・労力、ストレスは最小限に
 ・短期集中

まず、楽に、IT化の成果を実感してもらうことが目的なのです。

        「けちけちIT化」の具体例

以下、あるNPO法人でのIT化を支援した事例の導入部分をご紹介します。

【テーマの選定】
ヒアリングの結果、いくつかテーマがありましたが、NPOの会報誌を発行しているチームの責任者のIT化の意欲が高く、メール(メーリングリスト)を利用するだけで業務効率の向上が見込めたので、これをテーマとしました。

【IT化前】
会報誌の編集は以下のような流れで行われていました。
   原稿を電話、口頭で10人程度に依頼
   手書き、または家のパソコン、ワープロで作成された原稿をFAXや手渡しで回収
   これを、編集チームでFAX、電話でやりとりしたり、会議を何回か開いて編集、チェック
   版下を切り貼りで作成して印刷に出す

【IT化の提案】
この編集作業をメーリングリスト上でやることを提案しました。
具体的には、会報誌のメーリングリストをつくり、そこで原稿をMSWordでやり取りして完成まで持っていくというやり方です。
具体的には、yahooグループという無料のメーリングリストを使いました。メールアドレスをもっていない人にはyahooメールという無料のメールアドレスを、パソコンをもっていない人には、パソコン購入とインターネット接続をしてもらいました。

【IT化後の成果】
この方法をとったことで、これまで、編集中に何回も会議をもって作業していたのがほぼすべて在宅で可能になり、ボランティアの方々の負担か大きく減りました。
また、電話や口頭で連絡がつかないなど、滞りがちだった流れも、メールでの非同期コミュニケーションになることでスムースに進むようになりました。

【その後】
このことで、メールをつかって、仕事をすることのメリットが理解され、他のチームや、プロジェクトでもメーリングリストが利用されるきっかけになりました。
その後のサイクルでは、ホームページ改訂やイントラネット構築へと進んできています。

          「けちけちIT化」の詳細

最初にあげたポイントについて、上記を例に具体的にご説明しようと思います。

【顧客の実行可能性が最重要】
テーマ選択にあたっては、顧客とITCで実際に実行できる、という見通しがあることが必須です。具体的には「やる人=やる気があり、やれる人」がいて、途中に引っかかりそうなハードルをITCがクリアする(または、クリアしてもらう人をつれてくる)手段をもっていないと失敗します。上記事例では、責任者の方がパソコンの利用に非常に意欲的で、過去にMS-Dosのパソコンを使っていたと聞いて、大丈夫だと判断しました。
また、yahooメールやyahooグループについては、私自身他の案件ですでに使ってことがあり、その特徴や操作を把握していました。  

【成果は小さくてもいい】
他にテーマとして、ホームページの改訂や、会員データベースの整備などがあり、こちらの方が、成果としては大きなものが期待できましたが、実現までの期間、必要なリテラシや労力、ソフト購入費などを勘案して、後回しにしました。
最初は、「ITの有効性」を理解してもらうことが目的ですので、まずは、楽に、早く成果がでることが最重要です。

【まずは、今あるものをつかう】
パソコンやソフトの新規購入には大きな金銭的負担がかかるので、所有のハードとソフトについてヒアリングをしました。すでに、チームの数名の方はパソコンで原稿を清書したりしていました。
また、個人的にメールを利用している人もいました。
すでにスキルを持った人がいるということは、支援するITCの労力を考えると非常に重要です。

【必要最低限の性能でいいので、無料、格安のものを導入】
キーメンバーの方はパソコンを持っておらず、購入したいと考えていました。
型落ちの格安のパソコンと中古のディスプレーを代理で購入しました。
メールアドレスや、メーリングリストは無料サービスを利用しました。
こういったとき、気をつけることは顧客の予算は最大限に利用することです。
たとえば、パソコンに10万だす気があれば、5万で本体を調達し、プリンタ、ADSL、Officeソフトまで購入してしまうことです。決して、5万でできますよ。と本体だけ購入すべきではないと思います。

【顧客の労力、ストレスは最小限に】
パソコンの初期設定や、インターネットの契約、メールやメーリングリストの登録などは、ITCが代行しました。
設定や登録は1回限りなので、初心者の方の支援の場合は最初はスキップする方がいいと思います。
こういった作業は、ITCが代行すれば短時間で終わりますが、そうしないと、そこでくじけてしまうことが多いからです。
必須スキルとして、MSWordでの作成とメールに添付して送る方法、開く方法のみに絞ってマスターしてもらいました。

【短期集中】
人間のやる気は時間の経過とともにどんどんなえてきてしまうのが普通ではないでしょうか?
そのためにはITCの労力は最初に短期集中で投下すること、短期に完了するための段取りと必要にせまられるような開始タイミングを選ぶといったことが重要だと思います。
上記事例では、パソコンの購入、設定やメーリングリストの開設もできるだけ急ぎ、キーになる方には半日対面でMSワードやメールの使い方をサポートしました。また、メールアドレスの登録やインターネットプロバイダーとの契約などは、本人と話をしたその場でパソコンに向かい、必要事項を聞きながら手続きを代行したりしました。

               結論

これまでMAIDOフォーラムで研究しきてている「検証ユニット方式」とは、まず最初に実行し、成果をだし、その次に考えて、さらに投資をして、実行し、成果をだすという拡大スパイラル式にIT化をすすめようという考え方だと私は理解しています。
「けちけちIT化」は独立ITCが、「検証ユニット方式」を用いて、小企業やNPOなどの支援をする場合の最初のパターンの一つとして有効ではないかと考えます。
「ITの理解、リテラシ」や「IT化の有効性」の認識の低い組織にいきなり、経営戦略や情報化戦略の話をしても、2・3回の会議、いや講義で、「わからん、やる気なくなった」となるのが落ちです。そういう組織に対しては、今あるものや無料のものを利用して、最小限のお金と労力で、ともかく成果を実感してもらえることが有効です。
まず、「IT化の有効性」を認識してもらい、それをきっかけに「ITの理解、リテラシ」とモチベーションを向上させつつ、成果を出しながらレベルアップしていくことが可能になるからです。

しかし、こういった支援をする場合、ITCは「こうすべき」とわかっているだけでなく、実際に顧客が成果をだせるまでの具体的な手段とスキルをもっていることが必要です。
たとえば、無料や安価に利用できるソフトやサービスの知識と利用スキル、ヒアリング、ファシリテーションや小さなプロジェクト推進のノウハウ、などです。
さらに、コスト負担を抑えるには、アドバイザー制度など公的支援の仕組みの活用も有効でしょう。

これから、そういった分野についても、実践ノウハウのご報告ができればと考えています。

                         ITコーディネータ/布 俊晴

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「eBusiness環境の企業情報システム」これからの流通・小売業界の展望

「eBusiness環境の企業情報システム」これからの流通・小売業界の展望 という、寄稿論文をITコーディネータ筒田忠が投稿しました。小売・流通業におけるBtoB(SCM)システムとBtoC(CRM)システムの重要性とその効力を最大限に発揮させるビジネス・コア(ERP)システムの必要性を論じ、変わりゆく情報システム部門の役割とITコーディネータのスタンスを考えてみました。下記PDFファイルをクリックしてご覧ください。eBussiness_EnterprizeSYS.pdf

コンサルタントとITコーディネータの違い

■ITコーディネータはコンサルタントなのか?
コンサルタントとは企業内だけでは解決できない専門的な問題を解決するための支援業務を行う者と思われます。特に問題を解決するために有効なソリューションを提案し効果を実証することだろうと思われます。ITコーディネータ資格を取得したとき経営戦略立案手法も勉強したのだから個人的にコンサルタント資格を得たように感じました。コンサルタントの定義自体が曖昧なので自分自身がそうだと思えばそれでよいのでしょうが、現在実際にITコーディネータとしての活動を行ってみるとどうも違うように感じております。ITコーディネータはコンサルタントなのか?顧客は何を期待して依頼してくれているのか?ITコーディネータはその名前のとおりコーディネータなのであってそんなに大上段に構える必要はないのではないか?それぞれの契約によって変わるかもしれませんが、自身の経験からコンサルタントとITコーディネータの違いについて考えてみました。

■コンサルティング開始
約1年前にある企業とコンサルティング契約を締結しました。上場企業で約5名の情報システム人員を有している企業ですが、30年来利用しているシステムのため現在の情報システム人員は運用保守業務が主体となってしまっており、現在在籍している人員でシステムを初めから構築した経験はありませんでした。そのシステムを全面的に刷新することとなり、その構築支援として契約いたしました。はじめは、ITコーディネータにおけるコンサルティング契約ですからプロセスガイドラインに沿って経営戦略から立案ですよとか、SWOT分析などを提案し実施しようとしたのですがどうもあまり乗り気でなく、そのような構築手法理論などは優先順位が低く必要性は感じてくれましたが、そんなことよりもっと重要なことがあるという返事で実行されませんでした。今回の契約は決して安い金額ではなく、ではもっと重要な問題とは本当に重要なのかと、こちらが悩むようになりました。

■でも必要とされている

元々依頼内容がITコーディネータにぜひプロジェクトに参加して欲しいというそんな程度でした。しかし、ITコーディネータのプロセスガイドラインが気に入って依頼されているわけでもなく、何か違う価値をITコーディネータに求めていました。プロセスガイドラインに沿った活動をしているわけではないのに、またその作業を行おうという思いもないのに、それでいて契約を切られるわけではなく、次は何時着てくれるのですかと、なぜか必要とされている状況が続きました。では何を行っていたかと言うと、システム構築を行っていく過程では様々な問題が発生します。コンピュータ専門用語の正確な理解、ベンダー側担当のSEが不満に思っていること、利用者が疑問に感じていること、そして経営者からの突然のシステム変更要望など、そのような様々な問題に対してどのように対応していくべきか、経験がないと中々出来ない作業だと思われます。またそもそもSEの不満、利用者の疑問などを気づき、すばやく対処していくことも難しいことであり、高度なスキルが必要になると思われます。そして導入を予定しているシステムはうまく業務に適用するのかどうかを見極める目利き力も必要となります。そのような情報システム構築に関しての相談役のような役割をしておりました。そのような過程で、もしかして顧客はシステム構築におけるITCのプロセスガイドライン理論の提供とその実行ではなく、この「気づき」と「目利き力」を求められてるのではないのかと考えるようになりました。さらには、問題点を気づいた時にわかりやすく伝えてくれて、解決のために中立的な立場で関係者を集めて対策を打てるコーディネーション能力を持った、まさしくITのためのコーディネータが求められているのではないかと考えるようになりました。もちろんプロセスガイドラインは重要でありその知識があるからこそ、必要な関係者をコーディネートし解決に向けた対策がうてるようになると思います。しかしプロセスガイドラインを知っていると言ってもその程度の知識というのも現実に感じました。それを顧客もわかっていたのではないかと考えています。

■情報システム室代行業はコンサルタント?

ITコーディネータとしてのコンサルティング契約は、自らが高度な経営理論及びシステム理論を伝え解決していくことではなく、顧客視点となって経営者の想い、利用者のシステムにおける疑問の相談窓口となる情報システム室の代行業だと考えるようになりました。役割が情報システム室ですから突然、経営者、利用者の方に対してまずはSWOT分析です、と言っても皆さんびっくりされるだけであり、受け入れられなかったのは当然だと現在思っております。それよりも、普段利用者及びSEがシステムについて感じていること、最新のITの活用事例ってどんな感じ、そして経営とITを結ぶ方法などを経営者と話し合えるような身近な相談窓口として存在するだけで非常に重要な役割を得ていると思われます。特に中小企業ではシステムにおける専門部署もないところが多く、このような役割を担うITコーディネータは今後特に重要になると感じました。契約していただきました上場企業でも実態はあまり変わりがないことが今回の経験で分かり、よりこの思いは強くなりました。資格を取得した時はコンサルタントになった気分でしたが、最近ではそんなに肩肘を張らず情報システム室代行業と考え、もし経営戦略立案などが必要であれば経営コンサルタントをコーディネートし、その結果をうまく情報システムへ反映できるように助言をすれば良いのではと考えております。ITコーディネータの役割は経営とITの橋渡しですが、トップダウンアプローチだけではなく、実際に情報システムを利用される方と経営者の橋渡しも非常に重要な役割だと思います。ITコーディネータはそれぞれの立場での想いを意見として取りまとめる。または聞いてあげる。そして理解してあげる。そんな人材だと考えるようになりました。それはまさしく情報システム室が担う作業でありコンサルタントの仕事ではありません。その作業を代行できる存在意義は、コンサルタントではないITコーディネータとしても、特に人材不足の中小企業にとっては非常に重要な役割であると思われます。

ITコーディネータ 認定番号:0023112004C長尾 道晃

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